※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「おう、マモル、ここだ、ここ!」
マモル「こちらでしたか先輩、お疲れ様です。ランチに誘っていただいてありがとうございます」
ショウ「お互いにマスク姿は見慣れないもんだから、なかなか気がつかないものだな」
マモル「出歩くときにはもう必需品ですね。新型ウィルスの予防のためのマスクとアルコール消毒は日々のルーティンになっていますよ。2020年に入ってまだ2ヶ月も経過していませんが、まさかこんな混乱になるとは年明けには思いもよらなかったです」
ショウ「このご時世、何が起こるかまったく予測できん。一寸先は闇だよ。用心が大切だ」
マモル「しかし人間不思議なもので、これだけマスク姿の人たちと接していると、接客中などでマスクを外して話をしていると、相手のマスクを外した部分に注目してしまうんです。以前は鼻や口をそこまで気にしたことがなかったんですが、最近は人によってまったく違うんだなって思いますよ」
ショウ「確かにそうかもしれないな。マスクをしているのとしていないのでは、ずいぶん印象も変わってくる。マスクをしているとなかなか区別がつきにくいということは、日ごろ無意識のうちに鼻や口の特徴で見分けていたのかもしれない」
マモル「昨日、RPO(Recruitment Process Outsourcing・採用代行サービス)の担当者と初めて会って打ち合わせをしたんです」
ショウ「ほう…… 俺の注文した料理が来たから、とりあえず先にいただくぞ」
マモル「どうぞ。もちろん一度の打ち合わせでこちらの意図が明確に伝わるかというと難しいので、今後も何度か会って、どんな人材を求めているかをすり合わせしていく必要があります。何社か依頼して見積もりを出してもらっているところです」
ショウ「だろうな…… お、意外に美味しいな、この明太子パスタ」
マモル「そのときに驚いたんですが」
ショウ「思ったよりもコストがかかることか? 次回は別なパスタも頼んでみるか、他のもうまそうだ」
マモル「いえ、請求額に驚いたんじゃなくて、そのときの担当者の方の唇が美しいことに驚いたんです」
ショウ「なんだって!?」
マモル「いきなりこちらの話題に食いつきましたね…… いえ、最初はマスクを外した部分だから妙に気になったんですが……」
ショウ「若い女性なのか? その担当者は?」
マモル「まあ、そうですが。変な意味じゃないですよ。勘違いしないでくださいね。それが、美しいなと感じるようになったのは会話をしていく中でのことなんです」
ショウ「ほう。言葉づかいや口調はどうだった?」
マモル「とても丁寧でした」
ショウ「だとすると、マモルが美しいと感じた原因はそこだろう。唇の艶や形だけじゃないな」
マモル「どういうことでしょうか?」
ショウ「ローマの休日という映画で脚光を浴びたイギリス国籍の女優、オードリー・ヘプバーン氏は知っているだろう」
マモル「もちろん知っています。ティファニーで朝食をという映画にも主演されていますよね」
ショウ「彼女は、美しくいるためのコツについてこう述べている。
『美しい唇であるためには、
美しい言葉を使いなさい。
美しい瞳であるためには、
他人の美点を探しなさい』
とね。相手を尊重する言葉や視点が、共感や美しさといった感動を相手に与えるんだろう」
マモル「なるほど。言われてみると確かに瞳も美しかったですね。そうか…… それは他人の美点を探しているからなのか…… 人材を発掘する仕事にはうってつけじゃないですか。やっぱり彼女に任せた方がいいですね」