【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
4月中旬からゴールデンウィークまでの期間は、塾業界において1年間で唯一ゆっくりできる時期だ。11月から続いた怒濤の如き激務で疲労はピークに達しており、ここで休養をしっかりとっておかないと5月中旬からの忙しさへの対応が鈍くなってしまう。
ということで、日曜日は1日完全に塾を閉め、のんびり温泉に浸かりに出かけ、帰りに顧問税理士の天海さんの事務所にお土産を持って立ち寄った。
「これは美味しそうなお饅頭じゃな。ありがとう、美味しくいただくとするよ。ゆっくりリラックスはできたかい?」
「なんだか数年ぶりに休みをとった気分です。ゆっくりはできましたが、これまで張り詰めていた緊張の糸が切れて、明日からの業務に支障が出るような気がして怖いですね」
「まあ、気分一新、仕切り直しじゃと思ってリスタートすればよい」
「話は変わるのですが、そのお饅頭を買った際に、ふと、私の学習塾の消費税の納税はどうなっているのかって気になったんです。記憶にないのですが、確定申告にそんな項目ありましたか?」
「個人事業主の消費税納税は課税売上高が1,000万円を超えてからじゃな。月の売上が50万円を超えたので、このままいくと今年度の売上は600万円ほど。まだそのラインには乗らないから免除ということになるの」
「ということは、今のおよそ2倍の生徒を集められるようになってからということですね。しかし、今年は高校受験を控えている塾生も多いので、受験対策の有料ゼミも年末にかけて行う予定ですから、もう少し塾生数が増えたら1,000万円の売上に到達するかもしれません。そうなると、来年の確定申告の際には消費税の納税に100万円ほどかかってくるのか・・・・・・ 大丈夫かな」
「ホホホ、すぐに消費税の納税義務は発生せぬよ。
課税売上高1,000万円を超えた2年後から
の話になるし、
簡易課税制度を利用すれば
学習塾の場合、
売上×50%×10%=50万円になるな。」
「そうなんですか。じゃあ、今年や来年に売上が1,000万円に到達しても、消費税の納税はしばらく免除されるんですね。ちょっとホッとしました。でも来期には売上1,000万円達成したいです!」
「消費税はお客様から預かっているものを国に納めるのを免除されているにすぎないから、あんまり喜ぶところではないと個人的には思うがな。いわゆる益税というものじゃ。税金のことだけ気にしてビジネス判断するのは個人的には好きではないし、判断を誤る可能性が高いが、税理士なので一応制度ついては説明しておく。ちなみに
個人事業主の所得税は累進課税方式
で、あくまでも課税対象の所得額じゃが、
900万円を超えると33%
となる。こうなると
最高23.9%という法人税の
固定税率より高くなる計算じゃ。
ここまできたら法人税の方が低くなるから、法人化も検討してもいいかもしれぬの」
「法人化ですか。ちょっと夢のような話ですね」
「課税売上高が1,000万円を超えて、2年後に法人化すれば、さらに消費税納税免除の期間が2年延びる。つまり4年間は免除期間と以前は言われていたが、2022年10月1日から課税事業者のみが消費税を請求できることになるので、消費税をもらいながら払わなくていいというのは出来なくなる。まぁ当たり前の話だと思うぞ。わしも長年をこの仕事をやっていて色々な経営者を見ているが、
節税意識が強くて
税金のことばかりを気にしている経営者は
結局うまくいっていないぞ。
事業がうまくいって利益が膨らめば支払う税金も多くなるのは当然のことじゃ。納税額が少ないのは事業がうまくいってないことなのに、それを喜ぶのはわしは良く分からん。もちろん、お金が出ていくのは嫌なのは理解出来るがの。あと、世の中で言う節税は無駄遣いじゃとわしは思ってる。まぁ、これははじめさんがさらに儲かってきたら話すとするかの」
「そうですか。それは助かる制度ですね。しかし、
実際に売上はどのくらいになったら
法人化を検討すればいいのでしょうか?」
「そうじゃの、
経費などを差し引いた利益で
900万円じゃから、
売上じゃと
1,500万円から2,000万円
というところかの」
「うーん、現状の3倍以上ですか・・・・・・」
「おそらくそうなるためには、教室数も増やさねばいけぬし、講師の数も増やさなければならなくなるの」
「法人化できたら、そんな従業員にもっと手厚い雇用ができるようになりますね。そうなると僕も嬉しいです。2年以内に売上1,000万円。さらにその2年後には売上2,000万円まで伸ばしていきたいですね!そしてそこから消費税を納税していきます。モチベーションが上がってきましたよ!」