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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 217 起業に向いている人の特徴」

 

今回のポイント
 自分の資質を見つめ直す 

 

 

2025年も6月に入り、夏の暑さを実感する日が多くなってきた。

塾業界に身を置いている者ならば、無意識でも夏期講習会募集が近づいてきたことを真っ先に感じて臨戦態勢に入る。

 

募集活動といえば、DM名簿を確認して、まずは過去に参加したことのある一般生に募集の告知をするのが定石だ。

早めに決断してもらいその波及効果を期待する。

友人や部活の後輩などに声をかけてもらうことでDM名簿にないまったくの新規生も獲得が可能になるので早いに越したことはない。

 

昔勤めていた進学塾では毎回莫大な広告費を使いチラシやCMなどを打っていたが、今は新聞をとっている家庭自体が少なくなっているので紙面の広告媒体では効果が薄い。

やはり今のご時世、ネットをいかにうまく使いこなせるかが広く告知するうえで大事な点だろう。

 

 

そう言えば、昔は授業の合間の休み時間すら一般生の家庭へ電話して講習会の募集活動をしていたな。

授業もパンパンに詰まっているうえに、生徒への学習面談や授業後の補習対応、さらに長々と続く担当講師らとの打ち合わせや報告会。

昼休みも夕方の食事をする暇すらなく、5分でも時間が空いたら電話がけをしていた。

それで時間外手当も残業代も支給されないのだから、勤め先はブラック企業の代表格だったに違いない。

 

そんな企業体質だったが、さすがに今はかなり改善されていると人づてに話にを聞いた。

 

過去の体験を懐かしんでいるところにちょうど昔の同僚から電話がきた。

実に3年振りに聞いた声の主は、3年ほど後輩となる山内という男で、年齢は40歳後半。

私と同じく数学を担当しており、数年ほどではあるが塾長まで務めたキャリアがある。

 

とても行動力があり、話もうまい。

いざ塾長となれば年上の先輩であれど容赦なく叱責し、自分の理念を熱く語っていた。

若い職員であっても成果を上げた者への評価は公平で、人心掌握という力も相当だったと記憶している。

 

ただし、言っていることと自身の行動にかなり矛盾している点が発覚し(女性職員との問題)、塾長を解任された。

 

3年振りの電話の内容を要約すると、起業して学習塾を経営し、順調にいっている話を聞いて自分も起業したいためノウハウを教えてほしいというものだった。

 

 

起業というものは、コツさえ聞けば誰でも成功できるというわけではないだろう。

 

私の場合は、信頼して相談できる顧問税理士の天海さんとの出会いが大きい。

手続きや資金の準備など多くのことを教えていただいたし、その後の経営でうまくいかない際もいろいろな角度からのアドバイスを受けてたくさんの気づきを得ることができた。

 

私自身、起業に成功するためには「情熱や志」「行動力や観察力」「変化に対応する感性や本質を見極める眼」「発信力」が必要だと感じているが、それ以上に重要なのは「他人の意見を素直に受け止められる器量」だ。

 

山内の過去の失敗についてあれこれ説教をする気はないが、やる気になればなんとかなるよと簡単に背中を押すつもりもない。

 

小説家として有名な夏目漱石氏の言葉にも、

 

みだりに過去に執着するなかれ、

 

いたずらに将来に望を属するなかれ

 

とある。

 

ただし、現在の職場に居づらくなり、うまい話に乗ろうとしているだけなら私のノウハウを聞いても成功はないだろう。

 

起業をして成功したいのであれば、

 

まずは自分の資質を見つめ直すことができるかどうかだ。

 

約束を守れない人、規則を破る人は信頼を失う。

それは起業を成功したい人にとっては致命的な特徴である。

 

自分としっかり向き合うことが必要であり、また、気づきを与えてくれる人も同時に必要であると伝えてみようか。

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